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私の家の小さな歴史には、3匹のヨークシャテリア(ヨーキー)が登場します。

 

1代目、最初に家族に参加してくれたヨーキーには、スパンクという愛称をつけました。おそらくはマルチーズの血が濃く混じっているだろうというその子は、ヨーキーにしてはモコモコと体毛が豊かでした。転勤で東京から大阪に引っ越しが決まった時に、私の妹が友達の獣医さんを介して渡してくれた、生後3ヶ月のオスのヨーキー。体の大きめな、呑気で屈託のない性格をしていました。6歳の長女と3歳の長男はごく当たり前の様にスパンクとも大阪の人々とも馴染んで行きました。犬も人間も、環境の変化に何事もなく適応できたのは、たぶんに成長期と重なり合っていたからでしょうね。

 

幸せな3年と半年を大阪で過ごしていた頃に、夫に再び東京への転勤の辞令が出ました。子達達にとっては、それは友達との別ればかりではなく、スパンクとの別れも意味することになったのでした。ちょうど日本のバブル期に遭遇して、狂乱と言える程に毎日日本の地価が上昇し、更新される時期でした。朝、転居の候補物件を6~7件ファックスで受け取り、新幹線で見に行っても、東京に着いた途端に全物件が予約完了となってしまう状態でした。何回目かのトライアルの後、やっと押さえられたマンションはペットとの同居は不可能ということでした。子供達には、お友達との別れに加えて、兄弟同様のスパンクとの別れという試練が加わってしまったのでした。スパンクは大阪のお友達の家に、新しい家族として参加することになりました。

 

東京のマンションでの新しい生活。一生懸命に新しい生活に慣れることに比例して、スパンクの抜けた見えない穴もまた、どんどんと大きく育つのでした。でも、スパンクは電話の向こうで元気でした・・。

 

スパンクは遠くにいるけれど、新しい家族に愛されてるみたい。元気でいてくれてありがとう。スパンクの写真をたくさん飾り、ヨーキーのぬいぐるみを買い求め、部屋のあちらこちらにも様々な犬のオブジェ。???・・ところが、何なのだろうか、だんだん大きくひろがり始めたみんなの心の穴。スパンクの幸せなニュースも写真もオブジェも、ふわふわの体毛の触感や体温を伝えてはくれないのでした。

 

子供達は小学校の中学年から高学年に。第2次成長期は目前でした。埋められないどころか、広がり続ける穴は、代わりのもので埋めるのは難しいという事を身を持って知り、私はペットと同居可能な物件探しを始めました。

 

やっと家が見つかり、新しく生後1ヶ月半のオスのヨーキーを迎えられたのは、スパンクとの別れから7年近くの時を過ごした後でした。

 

今度こそは。命の続く限り家族でいよう。身を持って自然にわき上がる決意なのでした。新しい家族の愛称は、ランディ。大地の上で、しっかりと命を育んで欲しいから。楽しく生きて欲しいから。

 

呑気で人懐こいスパンクは、犬とも人ともすぐに打ち解け、友達になりました。その性格が、大阪と東京の距離を置いてもスパンクの幸せを私達に確信させ、安心を与えてくれたのでした。新しい家族のランディ。この子はスパンクとは対称的に、家族以外には心を開くことはあまりありませんでした。また、自分を犬とは認めず、散歩をしても他の犬の目線はすべてスルーなのでした。海外旅行で、ランディをペットホテルに預けた時も、案の定、決してお友達は作らなかったようです。食事の時だけは姿を見せて、あとはずっとケージの中に隠れていたそう。その反動か、ペットホテルにお迎えに行った時の喜びようは、どんな表現をもってしたら良いのか、見当がつかない程でした。

 

内気だけれど、ひた向きに家族だけに信頼の眼差しを注いでくれたランディ。どんな環境も生き物も、喜んで愛したスパンク。結局、私達家族からしたら、どちらの極端に違う性格の犬であっても、いとおしい存在であったことには変わりがない真実に気づかされました。

 

ランディは14年の生涯を全うするまでずっと一緒でした。誰にも打ち解けられず、ひた向きに家族であり続けたランディ。年を取り、白内障が進み、足腰や胃腸の力が弱くなって行ったランディの最期は、好きな焼き芋を少し食べ過ぎたことでした。消化に苦しみ、いつの間にか息がなくなっていることに気づきました。静かでも、まだ温かく柔らかいランディ。神様に召されたことを信じるまではしばらくの時間が必要でした。

 

どうしてどうしてどうして、好きな焼き芋を欲しがるからと言って、余分に食べさせてしまったのかしら。

 

好きなものを食べて命を全うしたのなら、もしかして幸せだったのかしら。
スパンクともランディとも、一緒の時を過ごせた幸せ。別れの張り裂けそうな悲しみと後悔。
どちらも何とも言えません。
総括もなくただ貴重な、いとおしい時間が存在していたという事実。

 

そして今。私の家にはまったりと昼寝をする、モモというヨーキーの女の子が暮らし始めているのです。

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